本がカバンに入っていないと落ち着かない、すぐっち(@sugucchi)です。
今回は、小説『マチネの終わり』にを読んで感じたことをご紹介。
数年前から有名な小説だけど、文庫版が出てようやく読めた。
目次
『マチネの終わりに』を読んだきっかけ
何年か前に、人気テレビ番組、『アメトーーク!』の読書大好き芸人が放送されていて、そこで何人もの芸人さんが『マチネの終わりに』を絶賛していた。
今回、文庫版が出たタイミングで、読んでみようと思って購入。
『マチネの終わりに』のあらすじ
天才クラシックギタリスト・蒔野聡史と、国際ジャーナリスト・小峰洋子。四十代という”人生の暗い森”を前に出会った二人の切なすぎる恋の行方を軸に、芸術と生活、父と娘、グローバリズム、生と死などのテーマが重層的に描かれる。いつまでも作品世界に浸っていたいと思わずにいられないロングセラー恋愛小説を文庫化!
ちょっとだけネタバレになってしまうが、6年間で3度しか会わなかった男女の、真実の愛の物語なのだ。
住んでいる世界が違う2人が出会って、ちょっと時間を過ごしただけで『運命の人はこの人だ!』と確信する2人。
けれど、その直観を信じきれず、いくつかの偶然も重なって2人は別々の人生へ舵を切る。
そして、最後のシーンで2人は出会うことができたのか…?
感じたこと
この小説では、人生のタテ軸とヨコ軸をものすごく考えさせてくれた。
タテ軸 … 時間的な軸
ヨコ軸 … 空間的な軸
ヨコ軸の話
ぼくは出張が多いお仕事なんだけど、旅先でやってしまう癖がある。
もしここ(旅先)で、全く違う人生を送っていたら、どんな風に生きているんだろう?
という思いに浸ってしまう。
名も知らない土地の電車の中で、窓の外をボーッと眺めて、『ここでもし人生を送ったら』と考えたり。
『世界観の妄想』とでも言ったら良いのか。
沖縄でも、大分でも、福岡でも、広島でも、まったく違う土地で生活を営んでいる自分を想像して、『そういう生き方もありだよね』って楽しんでいる。
『マチネの終わりに』を読んでいると、話の舞台が東京、パリ、イラク、ニューヨークなど、広い世界なのだ。
精緻な描写のおかげもあって、自分自身が旅で飛び回っているような感覚にさせてくれた。
タテ軸の話
この小説では、主人公とヒロインがある種の後悔をずっと持ち続けている。
あの時、あの選択をしておけば人生はどうなっていたのだろうか?
という後悔だ。
これは、どんなに幸せに過ごしている人でも、考えることだと思う。
そして、過去を思い出すということは、その過去の時間が人生の分岐点であることが多い。
この学校に行っておけば…、あの仕事を選んでおけば…、あの人を選んでおけば…。
そういう感情が、多かれ少なかれある。
主人公とヒロインは、あの人と一緒になっていたならば…、と心の片隅、いや真ん中でずっと感じながら、理性で抑えて流れに身を任せていく。
約6年の歳月が流れていくのだが、その中で相手のことが大きくなったり小さくなったりするのを、読んでいて切なくなってくる。
そう、この物語は心のひだに訴えかけるものがある。
心に残った文章
著者、平野啓一郎の文章は表現がとてもきれいだ。
最初は小難しいかな、と思ったけど、読み慣れていくにつれて好きになっていく文章だった。
「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えているんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」 (59ページ)
なるほど、恋の効能は、人を謙虚にさせることだった。年齢とともに人が恋愛から遠ざかってしまうのは、愛したいと言う情熱の枯渇より、愛されるために自分に何が欠けているのかという、十代の頃ならば誰もが知っているあの澄んだ自意識の煩悩を鈍化させてしまうからである。(86ページ)
相手のことを心から愛せないという以上に、相手と一緒にいる時の自分を愛せないというのは、大人にとっての大きな不幸だった。(357ページ)
まとめ
恋愛小説はあまり読まないけれど、『マチネの終わりに』は素晴らしかった。
男性にもおススメできると思う。
特に、ラストシーンにはグッとくるものがあった(ネタバレするので、ぜひ読んでみてほしい)。
あ、2019年秋から映画化するそうで、主人公が福山雅治、ヒロインが石田ゆり子だそうだ。
正直、石田ゆり子はキャラ的に優しすぎるんじゃないかな…、と読みながら感じたけどね。