出口治明さんの『歴史を活かす力 人生に役立つ80のQ&A』を読んだのでご紹介。
出口さんは、著書もいろいろ読んだし、講演会も参加したことがあるが、とにかく歴史に関する知識がとんでもなく深い。2年前に、APUに社会人留学した時も、直接お会いしてお話しできて、すごく感激したことを覚えている。
『全世界史』のように、壮大な歴史を語る本もあるけど、今回は読者からの質問に答えるかたち。これがまた面白かった。
出口さんの真骨頂は、質問されたことに対して、即座に、的確に、全世界の歴史を引用しながら答えていくところ。どんだけ引き出しがあるねん…、とため息が出るくらい。
この本からは、なぜ歴史を学ぶのかという総論と、リーダーシップに関する心に残ったところをシェアしよう。
目次
歴史を学べば、未来に活かせる
歴史は、単純におもしろい。学ぶというよりは、歴史のストーリーを楽しむ、のが近いかな。
でも、ちょっと視点を変えれば、未来に活かせるヒントが詰まっている。
たとえば、2021年1月現在、世界は新型コロナウイルスでカオス状態になっている。未来がどうなるのか、予測がつきづらい状況だね。
じゃあ、人類の長い歴史の中で、伝染病が流行った時代はなかったか。その時代に、人類はどうやって乗り越えてきたのかを知ることで、現代でも参考にできるところが多い。
歴史を学ぶことの意義の一つは、このように予期せぬ出来事に遭遇した時、適応するため参考にする、即ち「歴史を活かす」ことにつきるだろうと僕は考えています。歴史を多く知れば知るほど、最適解にたどり着くヒントになるのです。(Kindle位置No.20/3264)
また、歴史上には、さまざまな人物が登場する。成功や失敗を繰り返して時代は進むが、現代に生きるぼくたちにとってのケーススタディとなる。
特に、国をまとめあげるリーダーがどんな意思決定をしてきたのか、どんな葛藤を持ちながら国を治めたのかなど、参考になる部分は多い。まあ、国を治めるなんてスケールが大きすぎるけど。
次は、出口さんの人物評、リーダー像を見ていこう。
リーダーは、でっかいビジョンを描けるかどうか
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の評価とは
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康は、みんなが知ってる戦国時代の武将。豊臣秀吉が天下統一して、徳川家康が幕府を開く。
でも、出口さんが一番評価しているのは織田信長なんだよね。
Q19 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三人を、グローバル基準でどう評価されますか? A リーダーとしては織田信長が圧倒的に世界に通用する人物だと思います。 金銀銅の三通貨制を設けたり、楽市楽座を実行したり、海外との交易を盛んに行った。ビジネスに関するビジョンをいくつも打ち出した点で、三人の中ではぶっちぎって傑出しています。 それは信長が、他の戦国大名に比べてマーケットを知っていたからです。(中略)信長が傑出していたのは、「コレとアレを組み合わせていけば、天下が取れるで」という大きなグランドデザインを描けたところにあります。(Kindle位置No.865/3264)
グランドデザイン。要はでっかいビジョンですね。戦争に勝ったり、領地を広げたりすることよりも、他人とは違うでっかいビジョンが描けるのかどうか。
織田信長は、『うつけ者』と言われていましたが、凡人には分からない自由な発想があり、それを実行する力もありました。ビジョンを描き、実現する力が優れたリーダーにはあるということですね。
秦の始皇帝の話
日本よりも何倍も広い中国を、紀元前という大昔に統一した秦の始皇帝。徳川幕府が1600年くらいだから、どんだけ前のことなんだ…、と驚いてしまう。
その始皇帝のすごいところも、グランドデザインを描いたところ。そもそも、中国統一なんて誰も思いつかなかったことをやってのけた。
そして、それを維持するために文字を統一したり、道路を整備したり、法律を作って法治国家にしたり、新しいことをガンガン実行したわけですね。
始皇帝が形作った中央集権国家という考え方は、今の中国にも反映されているので、どれだけ強力なビジョンだったかが分かります。
部下に任せるリーダー像
項羽と劉邦の話
次は項羽と劉邦のお話。エリートの項羽と、雑兵あがりの劉邦も有名ですよね。横山光輝のマンガで読んだなぁ。
この二人が天下を争い、最後は劉邦が勝つんだけども、出口さんは、チームメンバーを上手く使えたかどうかという、『リーダーの器』を評価している。
つまり、項羽と劉邦の大逆転は「リーダーは有能な人材をうまく使った方の勝ちや」という話に尽きます。歴史には「あの大将より参謀のほうがずっと賢かった」という話が山のように出てきます。おそらくそれがリーダーの正しい姿です。自分を賢く見せたいばかりに失敗する政治家や経営者は山ほどいます。(Kindle位置No.1421/3264)
完璧に仕事をこなす人が上にいると、息詰まっちゃいません?それよりも、ちょっと抜けてるくらいがちょうど良い。
ぼく自身、そう気づいた時があって、後輩にはできるだけすきを作るように心がけています。
さいごに
この本には、『リーダー』だけではなく、『マネー』、『失敗』、『大逆転』、『女性』、『宗教』、『戦争』、『ライフスタイル』、『アメリカ』、『日本と世界』という章立てで語られている。
どの章も、ヘーッて驚くトリビアがたくさんあるので、歴史好きにはたまらない一冊だろう。
単純に楽しむもよし、仕事なんかのヒントにするもよし、な一冊だった。
オススメです!