僕は、生きている。生きている事は、信じていると言うことだ。僕が生きていることを、生き続けていくことを、僕が信じていると言うことだ。(サラバ!文庫版下巻 P.270)
周りばかりが幸せになっていって、自分だけ取り残されてしまう。そういう感覚を抱く事はありませんか。ぼくは、まさに今年はそんな心でずっと過ごしていた気がします。
何者かになりたい自分がいて、ブログを書き続けたり、いろんな人と出会ったりしました。でも何者にもなれなくて。
そして、SNSで見る周りの人たちの充実ぶりを羨ましがったり、自己嫌悪に陥ったり。周りには、そんなことを見せないけど、ずっとぼくの心はささくれだっていました。
そんな時期に、西加奈子さんの「サラバ!」を読んだのは最高の出会いでした。
目次
【読書】西加奈子さんの『サラバ!』を読んで、自分のことを信じようという勇気をもらった
自分だけが人生で取り残されてしまう
文庫版は、上中下と3冊に分かれています。上巻では正直なかなか没入できず、途中10日間ほど読まない時期がありました。しかし、中巻の途中あたりからどんどんと引き込まれるようになりました。
主人公は4人家族で、親の海外赴任でエジプトで幼少期を過ごします。後に離婚してしまう両親、学校にいかなくなってしまう姉と一緒に過ごしながら、自分は波風を立てずに平和に過ごすことを覚えます。すごく要領が良く、容姿端麗なため、特に深く考えることなく仕事や恋愛をうまくこなすことができました。
でも、ある時を境に人生がうまくいかなくなってしまうのです。
自分より下だと思っていた人たちが、自分よりも幸せになっていくのを主人公は目撃していきます。人生で自分だけ取り残されていくような感覚を持つのです。
特に、幸せになんかなってはいけない、と決めつけていた両親や姉が、自分の居場所を見つけて幸せになっていく過程があります。主人公は自分だけ置いてきぼりを食ったような気がして、胸が張り裂けそうになります。
この部分に、ぼくはすごく共感しました。自分だけ取り残された、と感じてしまうこの無力感は何なのか。主人公の心の動きがすごく共感できて、自分の物語であるかのように貪って読みました。
人生の拠り所を心に定める
大きな絶望を抱え、周りとの接触を絶った主人公を救ったのは、今まで忌み嫌っていた姉の存在でした。
姉から、ある手紙をもらったことがきっかけで、両親と向き合い、姉と向き合って、幼少期のわだかまりを一つ一つほぐしていきます。そして幼少の頃の親友との再会を通じて、自分の拠り所を心に定めて人生を前に進めていくんです。
冒頭に引用した言葉に、ものすごい力強さを感じました。
『生きている事は、信じていると言うことだ。僕が生きていることを、生き続けていくことを、僕が信じていると言うことだ。』
『あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ』
この言葉は、主人公が絶望している時に姉からもらう言葉です。
ぼくは、『人がどうやって生きているか、比べても意味はない。自分の生き方は、自分だけが決められるものだ』と捉えました。
周りの変化が激しくても、それに流されることはない。インサイドアウトの考え方に通じるものがあります。
まとめ
ぼく自身も、自分の芯がまだはっきりしていません。もうすぐ40になるのに。不惑って言うけど、その入り口にも立てていません。
それでも、こうやって生き続けているのなら、自分のことをもっと信じていいのかもしれない。自分の芯が定まっていなくても、自分を信じていればいい。そう勇気をくれた小説でした。
何だか生きにくいと思っている人はぜひ読んでほしい物語です。