今、自分の器の中(頭の中といい換えてもいいでしょう)に入っている、好き嫌いの感情、仕事観や人生観、ちょっとはいい格好したいという見栄、あれが欲しいという欲求、自分は正しいという思い込み、まわりは間違っているという偏見、上から目線などといったものを全て捨てて、無にしてしまう。頭の中をゼロの状態に戻すことができれば、器が大きくならなくても、新しい考え方を吸収し、自分を正しく律することができるのではないでしょうか。(P.90)
ライフネット生命の会長である出口治明さんの著書に心を動かされました。出口さんは名経営者でありながら、歴史に造詣が深く世界史の本なども出版されています。
ぼくは仕事の中でリーダーとして振る舞うようになって、リーダーシップ関連の本をたくさん読んでいますが、出口さんの今回の著書は中国古典からリーダー論を学ぶ、というユニークな視点でした!
目次
リーダーの「器」は大きくせずに、中身を捨てよう – 【読書】座右の書『貞観政要』〜中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」〜
『貞観政要』とはどんな本なのか?
貞観政要は、唐の時代の皇帝であった李世民とその家臣たちの言行録なんです。
中国史上、最も国内が平和的に治まった時代がありました。それが貞観の治と呼ばれ、唐の時代の627年〜649年までをさします。
このような平和的な時代は、中国の歴史上4回しかないと言われていて、当時の皇帝の李世民は名君主として語り継がれています。
李世民は、平和な国を作るためとはいえ、自らの父親を幽閉し、兄を殺害して王位に就いた人物。
そんな彼が必死に国の為を思って立派なリーダーであろうと心に決めたのです。そして優秀な家臣の意見に耳を傾けて立派に国を治めたのです。すごく謙虚な指導者だったのですね。
この本は、皇帝と家臣、すなわち上司と部下のダイアログによって構成されています。その会話の中にリーダーがとるべき姿勢のエッセンスがたくさんあります。
自分の器は大きくすることはできない。だから中身を捨てて常に新しくあろう
組織論で、どんな組織も上に立つ人の器以上には成長しないとよく言われます。だからみんな器を大きくするために努力をしようと。
でも出口さんは、そもそも人の器の容量は決まっていて、簡単に努力で大きくなるものではないと断じています。
そして、貞観政要に登場する李世民のように、器を大きくするのではなくて、自分の器を空っぽにすることで器の容量を大きくしようと提言しています。
どういうことかというと、人間は経験を重ねるにつれて、価値観が固まってきますよね。「こういう時は、こうすればいいな」とか、なんとなく分かってきます。そうやって経験則から判断するほうが楽だし、リスクが低いので、前例踏襲で物事を進めがちです。
しかし、それでは新しい考え方や発想を、柔軟に吸収することが難しくなってしまいます。もう自分の器は過去の経験で満たされていて、新しいアイデアを入れる隙間がないんです。
固定観念を捨てることによって、器を空っぽにできれば、常に新しい発想ができて柔らかくしなやかな生き方ができますよね。
違う言葉で言い換えるなら、謙虚になるということでしょう。
リーダーになる人であればこそ、自尊心や羞恥心を捨てて謙虚になろうとする姿勢が大事だ、と貞観政要では語られています。
まとめ
いつも謙虚な姿勢を崩さず、チームメンバーの意見に耳を傾ける。
ずっとできているとは言えないまでも、この本を読んでから日々心がけるようにしています。
そうすると、自分だけで出す結論より、一回りも二回りも良いものになっていくんですね。
いつまでも謙虚な姿勢を忘れずに、リーダーシップをとっていきたいと思います。それがチームの器を大きくすることにつながるから。